
ホームページの学校 第3回 – ユーザーは見た目じゃ動かない?戦略的デザインの基本
目次(Table of Contents)
コンテンツ
はじめに
ホームページを作るとき、多くの方がまず気にするのは「デザインの見た目」です。色はどうするか、写真の雰囲気はどうか、文字の大きさや配置はどうするか…。確かに、第一印象を左右するデザインは非常に重要です。しかし、私がオーストラリアでフリーランスのWebデザイナー/グラフィックデザイナーとして活動を始め、現在は岡山県倉敷市を拠点とするAEDIのデザイナーとして20年以上、数多くのホームページ制作に携わってきた経験から断言できるのは、「見た目だけではユーザーは動かない」ということです。
本当に成果を生むデザインは、単に「きれい」「おしゃれ」で終わるものではありません。
情報を整理し、ページの構造を明確にし、導線を設計することで、ユーザーが迷わず目的を達成できる体験をつくること。これこそが、デザインの本質であり、ブランドの価値を高め、信頼を築き、最終的には行動につなげる「戦略的なツール」としての役割です。
第3回では、デザインを単なる装飾ではなく、ビジネスの成果につなげる戦略的な視点から解説していきます。「見せたい」から「伝わる」へ。私の経験と実践をもとに、デザインの本質とその効果的な使い方を一緒に掘り下げていきましょう。
1. デザインは第一印象だけでは不十分
人は数秒で第一印象を判断すると言われます。ホームページに訪れたユーザーも同じで、「信頼できそうか」「自分の求めているものがありそうか」を直感的に感じ取ります。その意味で、デザインの見た目は確かに大切です。雑然としたレイアウトや古臭い雰囲気では、せっかくのサービスや商品が良くても「大丈夫かな?」と不安を与えてしまいます。
しかし、第一印象はあくまで「入り口」にすぎません。美しく整えられたデザインでも、欲しい情報にたどり着けなかったり、操作が分かりにくかったりすると、ユーザーはすぐに離脱してしまいます。つまり、「見た目が良い」ことと「成果が出る」ことはイコールではないのです。
成果につながるホームページに共通するのは、第一印象の良さに加えて、次のような要素が備わっていることです。
- 情報が整理されている:何がどこにあるか一目で分かる
- 導線が明確である:ユーザーが自然に行動に進める流れがある
- 目的に沿っている:企業やサービスの「伝えたい価値」が的確に表現されている
このように、デザインは「見た目」だけでなく、情報設計と体験設計を含めて初めて意味を持つものになります。第一印象の美しさは、あくまでその土台を支える一部分にすぎないのです。

2. 情報整理はデザインの出発点
2-1. 情報整理の重要性
デザインというと「色」や「形」といったビジュアル表現に目が行きがちですが、実はその前にもっと重要な工程があります。それが 情報の整理 です。
ホームページには会社概要、サービス紹介、料金、実績、FAQ、問い合わせフォームなど、さまざまな情報が掲載されます。これらをただ並べるだけでは、ユーザーは「どこに何があるのか」「自分に必要な情報はどこか」が分からず、迷子になってしまいます。
良いデザインは、まずこの情報を 「誰が、何を、どの順番で知ると最も理解しやすいか」 という視点で整理することから始まります。例えば:
- 初めて訪れる人が安心できるように「信頼感を与える情報」を先に配置する
- 興味を持った人がすぐに詳細を調べられるように「サービスの特徴」や「料金表」を分かりやすく配置する
- 最後に「お問い合わせ」や「申し込み」への導線を自然につなげる
情報整理がしっかりできていれば、後のサイト構成や導線設計も迷わずに進められます。逆に、情報が整理されていないまま見た目だけ整えようとすると、どれだけ華やかでも「使いにくい」「分かりにくい」サイトになってしまうのです。
2-2. サイト構成は戦略的デザインの土台
情報整理の次に行うのは、サイト構成(ページ構成・サイトマップ)の設計です。
サイト構成は、どのページにどの情報を置くか、ユーザーがどの順番で情報にアクセスするかを決める、ホームページの骨組みにあたります。ここをしっかり作り込むことで、デザインや導線の精度が格段に上がります。
具体的には次のポイントが重要です。
- 情報整理の土台になる
- トップページ、サービスページ、会社紹介、実績、FAQ、問い合わせ…
- どの情報をどのページに置くかを明確にすると、ユーザーが迷わず目的の情報にたどり着ける
- ユーザー導線を設計しやすくする
- ページの階層や順序を整理しておくと、ユーザーが自然に行動しやすくなる
- ブランドの一貫性を保つ
- ページごとのトーンやデザインの方向性を統一しやすくなる
- サイト全体で伝えたい価値観や印象がぶれず、信頼感を高める
戦略的デザインは、「情報整理 → サイト構成 → 導線設計 → ビジュアルデザイン」の順で考えると、成果につながるサイトが効率よく作れます。
2-3. 導線設計がユーザーを動かす
情報が整理され、ページ構成が決まったら、次は 導線設計 です。
導線設計とは、ユーザーが自然に「次にどうすればいいか」を理解できるように、ページの流れやボタンの配置を設計することを指します。
具体的には、以下のような工夫です。
- トップページからサービスページへ
- 興味を持ったユーザーが「もっと詳しく知りたい」と思ったときに、すぐにサービス紹介ページへ進めるリンクを配置する
- サービスページから事例紹介へ
- 「本当に効果があるの?」という疑問に答えるため、導線を使って実績や事例ページへ誘導する
- 最後はお問い合わせへ
- 納得したユーザーが迷わず行動できるよう、分かりやすい場所に問い合わせや申し込みのボタンを設置する
導線は「押し売りする」のではなく、ユーザーの心理の流れに寄り添いながら行動を後押しするものです。
導線がしっかり設計されたホームページは、ユーザーが迷わずゴールへ到達できます。
2-4. デザインはブランドを形づくる
最後に、デザインの役割として最もポジティブで重要な部分は、ブランドを形づくることです。
ブランドとは単なるロゴや色ではなく、ユーザーが企業やサービスに対して抱く「印象」や「信頼感」です。ホームページはその第一線でブランドを伝える役割を担っています。
例えば:
- 色とフォントの選び方
- 医療系なら清潔感、教育系なら信頼感、エンタメ系ならワクワク感…色やフォントは直感的にブランドを伝える
- 写真やビジュアルの使い方
- ストック写真ではなく、実際のスタッフやサービスを伝える写真を使うことで、リアルな信頼感が生まれる
- 一貫性のあるデザイン
- ページごとにトーンがバラバラだと信頼感を損なう。一貫性を保つことでブランド価値が強化される
デザインは見た目の美しさだけでなく、「企業やサービスの価値をユーザーに伝え、信頼を築く」戦略的ツールなのです。
3. 戦略的デザインを実現する3つのステップ
戦略的デザインは抽象的な概念ではなく、具体的なステップを踏むことで成果につなげることができます。ここでは、ホームページ制作で実際に効果を出すための3つのステップをご紹介します。
ステップ1:目的を明確にする
まず最初に行うのは、ホームページの 目的を明確にすること です。
- 「このサイトでユーザーに何をしてほしいのか」
- 「企業やサービスのどんな価値を伝えたいのか」
目的を明確にすると、情報整理やサイト構成、導線設計の方向性が定まり、デザインも自然に成果に直結するものになります。
例として、資料請求を増やしたい場合は、ボタンの配置や目立たせ方、ページ上での情報の優先順位を戦略的に設計します。目的が曖昧だと、どれだけ美しいデザインでも成果に結びつきません。
ステップ2:ユーザーを理解する
次に大切なのは、ターゲットユーザーを理解することです。
- ペルソナを設定して、行動心理やニーズを把握する
- 「誰が、どの状況で、どの情報を求めているか」を具体的に想像する
これにより、ページ構成や導線設計、さらにはビジュアルデザインの方向性まで、ユーザー目線で設計できます。ユーザーの行動や心理を理解したデザインは、自然に行動を促す力を持ち、成果に直結します。
ステップ3:コンテンツを戦略的に配置する
最後のステップは、コンテンツの戦略的配置です。
- 文章、写真、動画などの要素を最適な順序で並べる
- 重要なメッセージやCTA(行動を促すボタン)を目立たせる
- ページ全体のデザインの一貫性とブランド印象を維持する
例えば、トップページで「サービスの強み」を伝え、次に「実績・事例」や「お客様の声」を配置し、最後に問い合わせや申し込みの導線を置く流れです。こうした配置により、ユーザーは迷わず自然に行動へ進めます。
戦略的デザインを実現するには、目的を決める → ユーザーを理解する → コンテンツを戦略的に配置する というステップを意識することが重要です。
この3ステップに従うことで、見た目が整っているだけでなく、成果を生むホームページを効率的に作ることができます。
さらに、このステップは前章で整理した 情報整理 → サイト構成 → 導線設計 → ビジュアルデザイン と組み合わせることで、戦略的デザインの全体像が完成します。
4. 実例:デザインが成果を変えるシナリオ
ここまでで、戦略的デザインの基本とステップをご説明しました。しかし、文字だけではイメージしにくい部分もあります。そこで、実際にホームページ制作でよくあるシナリオを例に取り、デザインがどのように成果に影響するかを見てみましょう。
シナリオ1:問い合わせ数が少ない会社のサイト
- 状況
- サービス内容は十分に書かれている
- ページはカラフルでデザインはきれい
- しかし問い合わせフォームへのアクセスが少ない
- 原因
- ページ構成や導線が不明確で、ユーザーが「どこから問い合わせればいいか」が分からない
- 重要な情報(料金・サービスの強み)が目立たず、ユーザーが納得できない
- デザインは見た目重視で、ブランドの信頼感や行動を促す要素が弱い
- 改善ポイント
- ページ構成を整理し、問い合わせへの導線を明確化
- 重要情報を優先的に表示し、ユーザーの疑問や不安を解消
- ブランドカラーやフォントを統一して信頼感を演出
- 結果
- ユーザーが迷わず問い合わせページに到達
- 問い合わせ数が明確に増加
シナリオ2:新商品やサービスの認知を広げたい場合
- 状況
- 新商品ページを公開したが、アクセスはあるものの購入や申し込みに至らない
- 原因
- 商品の魅力や価値が伝わるデザインになっていない
- 写真や文章の順序が論理的でなく、ユーザーが理解しづらい
- ブランドイメージとページのデザインが統一されていない
- 改善ポイント
- ユーザー心理に沿った導線設計(商品の特徴 → 事例・レビュー → 購入ボタン)
- 写真やグラフィックで商品の価値を直感的に伝える
- ブランドのトーンに合わせた配色・フォントで印象を統一
- 結果
- ユーザーが商品の魅力を瞬時に理解
- 購入率や申し込み率が向上
シナリオ3:リブランディングや信頼感向上を目指す企業
- 状況
- 長年運営している企業サイトだが、古いデザインで信頼感が弱い
- 競合と比べて印象が薄く、ブランディングが伝わらない
- 改善ポイント
- 全体の配色・フォント・レイアウトを見直し、統一感のあるデザインに変更
- 実績やお客様の声を前面に出して信頼感を演出
- 導線設計を改善して、ユーザーが自然に問い合わせや資料請求へ進める
- 結果
- ブランドイメージが刷新され、信頼感が向上
- ユーザーのサイト滞在時間が増え、問い合わせや資料請求数も増加
まとめ
このように、デザインは単なる見た目ではなく、情報整理・構造・導線設計と組み合わせることで、成果を大きく変える戦略的ツールです。
- 見た目がきれいでも、導線が悪ければ成果は出ません
- サイト構成と導線を意識することで、デザインはユーザーを動かす力を持つ
- ブランドを意識したデザインは、信頼感や印象を強化し、結果として成果につながる
次回の第4回では、写真や文章などの素材とライティングのコツについて詳しく解説します。ここで学んだ戦略的デザインの考え方を活かすと、素材選びや文章作成もより効果的になります。
ホームページの学校について
「ホームページの学校(The Website Strategy School)」は、成果につながるホームページ制作の思考法と設計の基本をお届けいたします。対象は、ホームページの担当者になったばかりの方、中小企業の経営者、個人事業主、広報・マーケティング担当者など。Webやホームページに詳しくない方でも安心して学べる内容です。
本シリーズでは、「何のために・誰に向けて・どう届けるか」という成果を出すための本質的な考え方を軸に、ホームページ運営の工夫や実践的なポイントを解説いたします。経営者や担当者、個人事業主の方が、自分のビジネスや活動に合ったホームページを正しく設計し、成果へとつなげるための知識と考え方を学んでいただけます。
内容は、私がホームページ制作の現場で培ってきた知見をもとに構成しております。ただし、ここでご紹介する方法がすべて正解というわけではございません。ひとつの参考として、肩の力を抜いて読んでいただければ幸いです。
また、本シリーズは執筆の過程でリライトや加筆を重ねることを前提としています。その中で内容が変化する場合もありますが、より充実したものへと育てていくつもりですので、長い目でお付き合いいただければ幸いです。


